【新連載・第1回】愛しているのは、誰のこと?――『ザ・ワン・アイ・ラブ』(執筆者:今野芙実) | 翻訳ミステリー大賞シンジケート
はじめまして。2012年に友人たちと立ち上げた女子カルチャー(という名目の好きなもの寄せ集め)webマガジン「花園Magazine」で映画や本の話を中心に記事を書いている今野芙実、またの名をばちこあるいはvertigoと申します。今後、定期的にこちらでミステリ要素のある映画作品やそれに関連する小説のレビューを掲載していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。 こちらの翻訳ミステリー大賞シンジケートではミステリ「小説」に関する話題が多いと思うのですが、「映画」分野でこれは傑作ミステリ、というと皆さんどんな作品を思い描かれることが多いのでしょう? 原作があるものでしょうか、オリジナルでしょうか?またそのなかでは、どんな点が評価基準になるのでしょう? テーマやキャラクターが原作や作家の精神性に忠実であること? オリジナル作品としてのアイデアの強度? 「映像作品ならでは」の画面設計や音楽、演出面の面白さ? それとも驚きの大きさ? 人によって色んなパターンがあると思いますが、小説と同様に映画においてもまず「ミステリ映画」という定義から難しいものだと思います。私はこの概念をかなり広く捉えているほうなので、その映画に何かしらの「謎」が存在していて(場合によってはそのことに最後まで気づかないことさえあるかもしれません)、どこかのタイミングでその謎や秘密の本質が見えて「そういうことだったのか」とハッとする……そんな映画のすべてを「ミステリ映画」と呼んでもよいのかな? と思っています。 ただ、そうすると正統派の「探偵もの」や何等かの事件の犯人/方法/理由を見出すことに主眼を置いた作品(一般に「ミステリ映画」という単語からはそちらが連想されるでしょう)との区別が難しいかもしれません。 というわけで、ここでは「秘密/謎/奇妙なことがドラマを牽引する映画」はざっくり全部「ミステリアスな映画」というまとめ方にして、国も時代も幅広くさまざまに取り上げていきたいと思います。名付けて、ミステリアス・シネマ・クラブで良い夜を。 前置きが長くなりました。こうした広い意味で捉えたとき、「愛」にまつわる話というのは最も謎と秘密に満ちたものといえるでしょう。特に、喪われた、もしくは喪失の危機にある愛はその存在自体がドラマティックでスリリング。今回取り上げるのは、まさにそんな作品です。
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